たしかに、指よりも存在感のある個体を、ヤンは内心で求めていた。 ラインハルトは暴君志望者らしい要求を出した。 「たまにはヤンの口から求めてみてくれ」 「ええっ、厭だ、それだけは」 意味を取り違えていることに、ふたりは気付いていない。 「そこまで嫌がるほど、大したことではないと思うが」 「口は絶対に厭だ」 「………………」 ラインハルトが求めたのは、「欲しい」と声に出して言ってくれという意味だったのだが。 絶好の謀略を思いついたような笑みを、ラインハルトは形良い口許に浮かべた。 「だがフリードリヒのものはヤンのその綺麗な口で頬張るんだろう。勿体ぶらずに俺にもしてくれ」 ヤンは嘘を吐いた。 「……しない。そんなこと」 二十歳の若者はもうその気になっていて、ベッドの上を移動しつつあった。 「そうかな。ヤンを征服したいと思う気持ちはおそらく、俺も皇帝も同じだ。ヤンの清らかぶって取り澄ました場所は全部、めちゃくちゃに犯したい」 残酷に宣言して、細いヤンの顎を片手で捕らえた。 「痛いっ、ラインハルト!」 「褒美だ。この口で俺に褒美をくれ」 強い力で強制的に、口が開かされてゆく。 「厭だって……、頼むから、ラインハルト」 懇願の言葉を紡ぐ場所に、若い熱情が押しつけられた。 「や……っ」 目を背けて、ヤンは必至に唇を閉じて抵抗しようとする。 「舐めることもしてくれないのか。皇帝の寵姫というのはそれほどに気取ったものか」 |