●「プラチナ2」より抜粋●

 たしかに、指よりも存在感のある個体を、ヤンは内心で求めていた。
 ラインハルトは暴君志望者らしい要求を出した。
「たまにはヤンの口から求めてみてくれ」
「ええっ、厭だ、それだけは」
 意味を取り違えていることに、ふたりは気付いていない。
「そこまで嫌がるほど、大したことではないと思うが」
「口は絶対に厭だ」
「………………」
 ラインハルトが求めたのは、「欲しい」と声に出して言ってくれという意味だったのだが。
 絶好の謀略を思いついたような笑みを、ラインハルトは形良い口許に浮かべた。
「だがフリードリヒのものはヤンのその綺麗な口で頬張るんだろう。勿体ぶらずに俺にもしてくれ」
 ヤンは嘘を吐いた。
「……しない。そんなこと」
 二十歳の若者はもうその気になっていて、ベッドの上を移動しつつあった。
「そうかな。ヤンを征服したいと思う気持ちはおそらく、俺も皇帝も同じだ。ヤンの清らかぶって取り澄ました場所は全部、めちゃくちゃに犯したい」
 残酷に宣言して、細いヤンの顎を片手で捕らえた。
「痛いっ、ラインハルト!」
「褒美だ。この口で俺に褒美をくれ」
 強い力で強制的に、口が開かされてゆく。
「厭だって……、頼むから、ラインハルト」
 懇願の言葉を紡ぐ場所に、若い熱情が押しつけられた。
「や……っ」
 目を背けて、ヤンは必至に唇を閉じて抵抗しようとする。
「舐めることもしてくれないのか。皇帝の寵姫というのはそれほどに気取ったものか」
BACKTOP